なぜ猫背になってしまうのでしょうか。猫背には種類がある
ヒトは直立歩行をしている関係上、筋肉や骨盤をうまく使って脊椎を直立させなければいけないのですが、そのバランスが崩れた形で姿勢がかたまってしまうことがあります。猫背はこういった現象の一つで、円背型、前肩型、顔出し型、首無し型の4つの種類があります。猫背と言っても単に背筋を伸ばしたり胸を張ったりすればよいというものではなくて、このタイプを見極めて適切な対応を取っていかなければなりません。
姿勢に起因する身体の症状

ヒトは二本足で直立歩行をします。ヒトは二足歩行を獲得する進化の過程で脊椎の機能を重力に抗して体を支える機能へと進化させてきました。しかしまだ足だけでの直立に適応しきっていない不合理な構造が残っています。骨盤の一番上の仙椎の上面は約30度の傾きを残しており、脊柱がつねに前方に滑り落ちるような力が働いています。そのため、筋肉と骨盤を上手に使って脊椎を体の重心にうまく置くようにしなければなりません。これが正しい姿勢というわけですが、この正しい姿勢を何らかの理由でキープできなくなり、その状態が定着してしまうと、体の様々な場所に影響が出てきます。
例えば、このようなことでお困りではないでしょうか。
- 立っている時に腰がつらくなってくる
- ギックリ腰を繰り返す
- 肩甲骨付近が重だるい
- 背伸びすると身体中に違和感がある
- 背中が固まっている感じ
- よく寝違える
- 身体が縮こまっている
- 股関節に違和感がある
- 膝が痛い
- 外反母趾がある
こういった症状は日常生活の基本姿勢から発生します。元々は子どものときに作られ、その後それが固着していきます。特に勉強や仕事でのデスクワークや、PCやスマホの普及がそれに拍車をかけていきます。
こういったものは自然に治癒していくものではありません。何ヶ月も立っても取れないものは放置しておいて良いものでもないです。
そのことを内心で分かっているので、将来に対してこんな不安をお持ちではないでしょうか。
- この腰の痛みって、いつ無くなるのだろうか?
- 肩こりでイライラしたまま人生を送るのはイヤだ
- この痛みのせいでスポーツとか旅行とかできなくなるのでは・・・
- 子どもの面倒にはなりたくない
- 将来歩けなくなるのでは?
これらの原因はもちろんいろいろなものが考えられますし、内臓疾患に由来するものなどもありますが、姿勢に原因があることが多いです。具体的にこんな姿勢になっていないでしょうか?
- 頭が傾いている
- アゴが上がっている
- 顔の形が左右で違う
- 口が曲がっている
- 首がゆがんでいる
- 肩の高さが違う
- 胸の大きさが左右で異なる
- 背骨が極端に出っ張っていたりへこんでいたりしている
- 骨盤が傾いている
- 股関節の位置がおかしい
- 内股、がに股である
- O脚、X脚
- 足首のゆがみ
- 外反母趾
- 扁平足
- 浮き指
その原因は猫背かも

こういった場合、猫背である可能性が高く、冒頭にあげた症状は猫背に由来しているかもしれません。猫背は脊椎が変形しているというものではなくて、脊椎を中心にした筋肉が間違った姿勢を記憶してしまっていることから生じるものです。いわば身体が「形状記憶」をしているのです。
背骨は緩やかにS字カーブを描いており、胸の胸椎は後ろカーブ、腰の腰椎は前カーブをしています。しかし胸椎の後ろカーブが猫背になっている人が多いのです。
人間の体は座っているときに背中を丸めている方が筋肉を使わないので楽なのです。しかし楽な姿勢と良い姿勢は違います。腹筋を使わずに、背骨のたわみと骨周辺の靭帯ぐらいしか使わずにいるのが楽な姿勢ですが、この姿勢は結果的に猫背になるための筋トレをしているような事になっていまいます。その結果として、そのような姿勢に適応する形で筋肉がかたまっていきます。
例えば、上で内股、がに股と書きましたが、内股は骨盤が前傾することで起きます。骨盤が正常の位置よりも前に傾くようになると、お尻が出っ張り、それに対応するために太ももの前の筋肉が張るようになります。この姿勢が内股ということになります。がに股は骨盤が後継することで起こります。このときお尻は引っ込み腰が丸くなります。このバランスを取るために太ももの裏の筋肉(ハムストリング)が張り、膝が曲がって伸び切らなくなります。この姿勢をがに股といいます。
猫背の4タイプ

しかし、猫背と言っても単に背筋を伸ばせばよいというものではありません。まずどういうタイプの猫背であるのかを見分け、それにあった矯正方法を考える必要があります。
猫背は4種類に分けられます。
- 円背型
- 背中が全体的に丸まっています。そのため背中の骨(椎骨)がまるまって記憶されてしまっています。この場合肩甲骨を寄せて胸を張ろうとしますが、そうしても姿勢は良くなりません。かえって背中の筋肉がかたまってしまいます。これを解消するためには反対側の胸の骨に働きかけます。胸の骨を持ち上げるイメージが良いです。
この猫背で起こりうる症状は、肩こり、腰痛、背中の痛み、首の痛み、胃腸の不具合などです。 - 前肩型
- 横から見たときに肩が前に出ています。このタイプの人は肩の周りの筋肉が固まり、肩関節の可動域が狭くなっています。そのため腕が上がりにくくなっています。
肩を使うスポーツや、日常生活で肩を多用していると痛みが出やすくなります。肩の周りの筋肉を柔らかくし肩関節の可動域を広げて肩が動くようになっていくと改善していきます。
この猫背で起こりうる症状は、四十肩、野球肩、胸郭出口症候群などです。 - 顔出し型
- 横から見たときに顔が前方に突き出してしまっています。このタイプは首の骨(頚椎)が前方に傾いています。そのため慢性的な肩こりや頭痛に悩まされている人が多いです。
このタイプの猫背は治すのがやっかいです。なぜならご本人がその顔が前に出ている状態を感覚的に当たり前ととらえており、自分では実感しづらいものだからです。しかし他人の目から見ると一目瞭然です。
まずは鏡で自分の猫背の状態を確認し、その後ただしい位置を教えて上げる必要があります。その上で、身体の真上に頭が乗るように運動をしていきます。
この猫背で起こりうる症状は、肩こり、寝違え、頚椎症、椎間板ヘルニア、頭痛、睡眠時無呼吸症候群などです。 - 首無し型
- 肩の大きな筋肉(僧帽筋)が首にかぶさって、首が肩の中に埋没してしまっているタイプの猫背です。これは円背型、前肩型、顔出し型の特徴のすべてを併せ持ち、治療に一番時間がかかります。将来的に頚椎症などが発生しやすいので対策が必要です。
この猫背で起こりうる症状は、重度の肩こり、寝違え、頚椎症、椎間板ヘルニア、頭痛、睡眠時無呼吸症候群などです。
猫背の改善方法

猫背とは、上記のような悪い姿勢のままで凝り固まっている結果になります。
悪い姿勢のまま筋肉や骨に負担がかかり上記のような症状として出てきます。その悪い姿勢を体が形状記憶していき、その姿勢を身体が当たり前だと思っていきます。身体はもとの正しい姿勢を忘れてしまいます。
この状態を治すには、まず身体にいい姿勢を教える必要があります。猫背の人にいい姿勢を教えると「変に立っている感じ」という感想が出ます。これは身体が悪い姿勢を記憶しそれを当たり前だと思ってしまっているからです。そして、背骨の土台である骨盤を立てるようにします。
まず骨盤をたてて土台をしっかりさせて、その上に間違った形でかたまってしまった筋肉を緩め、正しい姿勢を作っていきます。